2024/09/17 10:50
それから、彼女との関係は微妙に変わり始めた。彼女は元彼との別れから立ち直ろうとしていて、俺はそんな彼女を支え続けることを決めた。俺たちは頻繁に連絡を取り合うようになり、時々一緒にご飯を食べに行くようにもなった。俺が彼女の話を聞くことで、彼女の気持ちが少しでも軽くなるなら、それで良かった。
だが、次第に俺は自分の気持ちに正直になれなくなっていった。俺は彼女をただの友達として見ているのではない。もっと彼女の近くにいたい、彼女を守りたいという想いが日に日に強くなっていた。しかし、彼女にとって俺は「優しい友達」以上の存在ではないかもしれないと、自分に言い聞かせていた。
時間が経ち、彼女の両親のリハビリも順調に進んでいた。俺は彼女の両親のリハビリを手伝いたいとお願いし、色々手伝うようになり、彼女と一緒に過ごす時間が増えていった。彼女は少しずつ心の重荷を下ろしていっているように感じた
「タケル君がいてくれるだけで助かってるよ、本当にありがとう。」
彼女のその言葉に、俺は心から彼女を支えたいと思ったが、どうしてもその先の一歩が踏み出せずにいた。
彼女の両親が無事に退院した日、俺は彼女の家族とも顔見知りだったので、彼女と一緒に両親を家に迎えに行った。リハビリを手伝っているうちに、ご両親とも自然に話すようになっていた。お母さんはとても優しくて温かい人だったし、お父さんも最初は少しぶっきらぼうだったが、時間が経つにつれて笑顔で話しかけてくれるようになった。俺はそんな彼女の家族を支えられたことが嬉しかったし、彼女の家族もまた、俺を信頼してくれていることを感じていた。
「お世話になったね。タケル君のおかげでここまで頑張れたよ。」
彼女のお父さんが、照れ臭そうに俺に感謝の言葉を述べた。俺はただ「いえ、そんな…」と返すしかなかったが、その言葉は心に沁みた。
彼女の両親が無事に退院し、夜の仕事を辞めて生活が安定してから、俺たちは以前にも増して頻繁に会うようになった。彼女はアルテミスキングスでの日々に集中できるようになり、精神的にも余裕が出てきたのだろう。彼女の笑顔を見るたびに、俺は心から彼女が幸せであることを喜んでいた。
俺たちは週末に食事をしたり、時々、映画を観たりしていた。そんな穏やかな日々が続く中で、俺は自分の気持ちをどう処理していいのか分からずにいた。
彼女は本当に俺に感謝してくれていたし、俺が彼女の支えになっていることも感じていた。しかし、それ以上の関係に進むことができるのか、俺には自信が持てなかった。彼女のそばにいることが幸せだと感じる反面、彼女が心のどこかで元彼を引きずっているのではないか、または俺を「友達」としてしか見ていないのではないかという不安が常にあった。
それでも、心の奥底にある俺の気持ちは隠しきれなくなってきていた。彼女が家族のために頑張ってきたことを知っているし、支えてきた時間は俺にとってもかけがえのないものだった。だけど、それ以上に俺は彼女を好きになっていた。単なる友人としてそばにいることに満足するのは、もう限界だった。
彼女が笑うたび、俺はもっと近くでその笑顔を見ていたいと思うようになった。彼女が心配事を打ち明けるたびに、もっと深く支えてあげたいという気持ちが強くなった。彼女が元彼のことを引きずっているとしても、今の俺にとっては、それを乗り越える時間を一緒に過ごしていく覚悟があった。
「俺はもう彼女のそばにいるだけじゃ、物足りないんだ。」